“黄金の卵”を産むニワトリの物語。内容はこう。畳む
とある所に“黄金の卵”を産むニワトリがいた。
毎日、かならずひとつ産むのだ。
だが、飼い主の女はそれに満足しなかった。ニワトリの腹の中には、多くの“黄金”があると考えたのだ。
女は迷いなく腹を引き裂いた。
だが、そこには黄金など無かった。
ニワトリは死に、女の手元に残ったのは真っ赤な臓物だけ。
無知で愚かな欲望は破滅を呼ぶ……そういう寓話だ。
――だけど、私には理解できない。この女は滑稽だったのだろうか?
自他の危険を顧みない挑戦は愚かなことなのか?
より多くの幸せを追い求めることは罪なのか?
そして何より、私は……ニワトリの腹を裂かずにいられるだろうか?
引き裂けば愚昧な者と非難されるのだろうか?
もし、そうだとしたら私は――
私は、なにもかも忘れるだろう。
金の卵を産んでいたことも、ニワトリの存在も……自分自身の名前すらも……
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