藍鼠 @ainz_fav 2日前 てことは詰め2出してからもうすぐ1年経つってことですよ早いな!!?? https://ec.toranoana.jp/joshi_r/ec/item/... いつの間にか完売してましたありがとうございます…🐯さんからは通知こないんだったね 自分用のパラレルまとめ本作りたいと思いながらだらだら一年以上経ってるんだよ せっかくそれっぽい加筆してるのに(彰こはwebオンリー2で出してた) ちょっとずつでも書き進めて完遂編をだな… ふたりのはじめて冒頭(全年齢)部分 *** ――シブヤの街は魔境だ。 シブヤに住む人種の内訳を見れば、半分は人間で残りの半分は確実に人外である。半数を占める彼らの外見は、元から人間に近いもの、人間に寄せて擬態しているもの、なにもせず素のままで過ごすものと様々だ。いずれにせよ生活習慣を含め、人間に合わせているものが圧倒的多数になるので、総合して見れば意識しないとわからないタイプのほうが多いかもしれない。 道の端に寄り、人の行き交う様を眺めていた彰人は、暇つぶしに通りがかる人を人間か人外か見分けながら――どちらなのかは彰人の直感でしかなく、正確な答えはわからない――ゆるく息を吐いた。待ち人はまだ来ない。 (……いまのヤツ) 目の前を横切っていった青年の後ろ姿を見送りながらぼんやりと思考する。角はなく、羽も尾もないけれど同(・)族(・)なのは間違いない。言葉にするのは難しいが、同じ種だと確信を持てるのは本能的なものなのだろう。 「し、東雲くん!」 自分を呼ぶ声にハッとして顔を向ければ、彰人の待ち人が胸元を押さえながら切らした息を整えているところだった。 「ごめんね、待たせて」 「言うほど待ってねえよ。つーか、オレがそっち行くって言おうとしたのにお前さっさと電話切るんだもんな」 「え!? あ、う……慌ててたから」 おろおろしながら目を泳がせるこはねに笑う。待ち合わせ場所を間違えていた彼女が慌てる様子は電話ごしでもしっかり伝わってきていたし、そこから急いで彰人のところまで来たのがわかるから、ついからかいたくなってしまう。 「そんなに早く会いたかったのかよ」 「……うん」 胸元を握り、照れくさそうにはにかむこはねは、彰人のいたずら心を簡単に打ち砕く。思いきり抱きしめたいという衝動をこらえた彰人はぐっと喉を詰まらせ、彼女に気づかれないよう手のひらを握りしめた。こはねの素直さは心臓に悪い。 ひと呼吸分、あえて間を置く。それから、ぶっきらぼうとも言える仕草で手を差し出した。 「ん」 軽く揺らしつつ無愛想に促せば、彼女は嬉しそうに笑いながら彰人の指先を握る。柔らかく、ひと回り小さい手のひら。くすぐったいくらいの弱い力。彰人はすぐにでも外れそうな手をしっかり握り返しながら、馴染んでいく温度にゆるく息を吐いた。 「あ」 ぽつりと漏らしたこはねの視線を追って空を見上げると、羽を大きく広げた人影が飛んでいるのがちらほらと目に入る。人混みとは無縁になる代わりに、いささか目立つ移動方法。 「そういえば、東雲くんも飛べるんだよね?」 「まあ、やろうと思えばな」 好奇心を浮かべたこはねの瞳が心なしかきらめいて見える。その目にじっと見つめられ、彰人は居心地の悪さを覚えながら苦笑した。 ――東雲彰人は悪魔である。 悪魔といっても多種多様、細分化しなければシブヤではメジャーな部類に入る。彰人は悪魔であることを隠しているわけではないが、種族の特徴である角や羽、尾に注目されるのが鬱陶しいので普段は見えないようにしてあった。言われないとわからないと揶揄されることが多いくらい普段は人間とまったく同じ生活を送っているので、飛ぶこともほぼない。 羨ましい、と続けるこはねに繋いだ手を揺らされ、彰人はふと思いついたことをそのまま口に出した。 「なら練習付き合えよ」 「うん、もちろんいいよ! どこで練習する?」 満面の笑みで即答するこはねと認識がずれているのに気づいて「歌のことじゃねえからな」と付け足せば、彼女は目を丸くしたあと何度も瞬きをした。 「いま飛びたいって話(はなし)してただろ」 「う、うん……じゃあ練習って」 「お前ごと飛べるかわかんねえし、連れてってやる前に何度か試さねえと――こはね?」 急に速度を落とす彼女に引っ張られ、たたらを踏む。通行の邪魔にならないよう路地の隙間に入り込むと、こはねは彰人の手と自身の胸元をぎゅっと握り、俯きながら小さく唸っていた。 「どうした?」 「ドキドキしすぎて、少し苦しい」 「……大袈裟だな」 「ありがとう東雲くん」 彰人を見上げ、表情を緩めて笑う彼女にぎくりと身体が強張る。 ――このまま壁に縫い付けて、口を塞いでしまいたい。 ――深く口づけを交わしながら、あらゆるところに触れてその笑顔を崩してしまいたい。 湧いた衝動を抑えるために、彰人はぐっと息を止めてこはねを腕の中へしまい込んだ。 彰人は悪魔で、当然のように〝悪魔らしい〟能力も持っている。普段は意識すること自体が稀なそれを勢いで使ってしまいそうな気がして、思わず目を閉じた。 「東雲くん?」 腕の中で身じろいだこはねが戸惑って彰人を呼ぶ。彰人が無言で頬をこすり付ければ、こはねは鳴き声のような音を漏らし、ぎこちない動きで彰人の背に触れてきた。控えめに添えられた手は好意が一方通行ではないことを実感させてくれる。それが嬉しい反面、抑え込んだはずの衝動があふれてしまいそうで怖い。 畳む favorite ありがとうございます!
https://ec.toranoana.jp/joshi_r/ec/item/...
いつの間にか完売してましたありがとうございます…🐯さんからは通知こないんだったね
自分用のパラレルまとめ本作りたいと思いながらだらだら一年以上経ってるんだよ
せっかくそれっぽい加筆してるのに(彰こはwebオンリー2で出してた)
ちょっとずつでも書き進めて完遂編をだな…
***
――シブヤの街は魔境だ。
シブヤに住む人種の内訳を見れば、半分は人間で残りの半分は確実に人外である。半数を占める彼らの外見は、元から人間に近いもの、人間に寄せて擬態しているもの、なにもせず素のままで過ごすものと様々だ。いずれにせよ生活習慣を含め、人間に合わせているものが圧倒的多数になるので、総合して見れば意識しないとわからないタイプのほうが多いかもしれない。
道の端に寄り、人の行き交う様を眺めていた彰人は、暇つぶしに通りがかる人を人間か人外か見分けながら――どちらなのかは彰人の直感でしかなく、正確な答えはわからない――ゆるく息を吐いた。待ち人はまだ来ない。
(……いまのヤツ)
目の前を横切っていった青年の後ろ姿を見送りながらぼんやりと思考する。角はなく、羽も尾もないけれど同族なのは間違いない。言葉にするのは難しいが、同じ種だと確信を持てるのは本能的なものなのだろう。
「し、東雲くん!」
自分を呼ぶ声にハッとして顔を向ければ、彰人の待ち人が胸元を押さえながら切らした息を整えているところだった。
「ごめんね、待たせて」
「言うほど待ってねえよ。つーか、オレがそっち行くって言おうとしたのにお前さっさと電話切るんだもんな」
「え!? あ、う……慌ててたから」
おろおろしながら目を泳がせるこはねに笑う。待ち合わせ場所を間違えていた彼女が慌てる様子は電話ごしでもしっかり伝わってきていたし、そこから急いで彰人のところまで来たのがわかるから、ついからかいたくなってしまう。
「そんなに早く会いたかったのかよ」
「……うん」
胸元を握り、照れくさそうにはにかむこはねは、彰人のいたずら心を簡単に打ち砕く。思いきり抱きしめたいという衝動をこらえた彰人はぐっと喉を詰まらせ、彼女に気づかれないよう手のひらを握りしめた。こはねの素直さは心臓に悪い。
ひと呼吸分、あえて間を置く。それから、ぶっきらぼうとも言える仕草で手を差し出した。
「ん」
軽く揺らしつつ無愛想に促せば、彼女は嬉しそうに笑いながら彰人の指先を握る。柔らかく、ひと回り小さい手のひら。くすぐったいくらいの弱い力。彰人はすぐにでも外れそうな手をしっかり握り返しながら、馴染んでいく温度にゆるく息を吐いた。
「あ」
ぽつりと漏らしたこはねの視線を追って空を見上げると、羽を大きく広げた人影が飛んでいるのがちらほらと目に入る。人混みとは無縁になる代わりに、いささか目立つ移動方法。
「そういえば、東雲くんも飛べるんだよね?」
「まあ、やろうと思えばな」
好奇心を浮かべたこはねの瞳が心なしかきらめいて見える。その目にじっと見つめられ、彰人は居心地の悪さを覚えながら苦笑した。
――東雲彰人は悪魔である。
悪魔といっても多種多様、細分化しなければシブヤではメジャーな部類に入る。彰人は悪魔であることを隠しているわけではないが、種族の特徴である角や羽、尾に注目されるのが鬱陶しいので普段は見えないようにしてあった。言われないとわからないと揶揄されることが多いくらい普段は人間とまったく同じ生活を送っているので、飛ぶこともほぼない。
羨ましい、と続けるこはねに繋いだ手を揺らされ、彰人はふと思いついたことをそのまま口に出した。
「なら練習付き合えよ」
「うん、もちろんいいよ! どこで練習する?」
満面の笑みで即答するこはねと認識がずれているのに気づいて「歌のことじゃねえからな」と付け足せば、彼女は目を丸くしたあと何度も瞬きをした。
「いま飛びたいって話してただろ」
「う、うん……じゃあ練習って」
「お前ごと飛べるかわかんねえし、連れてってやる前に何度か試さねえと――こはね?」
急に速度を落とす彼女に引っ張られ、たたらを踏む。通行の邪魔にならないよう路地の隙間に入り込むと、こはねは彰人の手と自身の胸元をぎゅっと握り、俯きながら小さく唸っていた。
「どうした?」
「ドキドキしすぎて、少し苦しい」
「……大袈裟だな」
「ありがとう東雲くん」
彰人を見上げ、表情を緩めて笑う彼女にぎくりと身体が強張る。
――このまま壁に縫い付けて、口を塞いでしまいたい。
――深く口づけを交わしながら、あらゆるところに触れてその笑顔を崩してしまいたい。
湧いた衝動を抑えるために、彰人はぐっと息を止めてこはねを腕の中へしまい込んだ。
彰人は悪魔で、当然のように〝悪魔らしい〟能力も持っている。普段は意識すること自体が稀なそれを勢いで使ってしまいそうな気がして、思わず目を閉じた。
「東雲くん?」
腕の中で身じろいだこはねが戸惑って彰人を呼ぶ。彰人が無言で頬をこすり付ければ、こはねは鳴き声のような音を漏らし、ぎこちない動きで彰人の背に触れてきた。控えめに添えられた手は好意が一方通行ではないことを実感させてくれる。それが嬉しい反面、抑え込んだはずの衝動があふれてしまいそうで怖い。
畳む