Vischio

恋愛進化論/紅蓮視点

≫放課後一部のみ

日直なんてかったるい。
それでもまぁ、日替わりでやってくる当番だから自分だけ逃げるわけにもいかない。
オレは自分の分担を終えて、日誌を書いている相手の元へ向かった。
これさえ終われば帰れる。

昼間は瞳にああ言ったけど、本当は待ってて欲しかった。
早く終われば追いつけるかもしれない──瞳は足が遅い──し、少しだけ待っててくれるんじゃないかという期待もあった。
それを確認するには早く仕事を終わらせる必要があるのに──

「なぁ、まだ終わんねーのかよ」

授業内容を書く欄で手が止まってるのを見て、思わず声をかける。
同じ当番を割り当てられた相手は溜息混じりにオレを見た。

「もうちょっとだって……落ち着きないなぁ速水くんは……」

オレは急いでんだ。
お前の仕事が終わればそれで今日は終わりなんだよ。

そんなことはもちろん口に出したりしない。
手を出すのも面倒で、机に座りながら筆が進むのを横目で見ていた。

「うーん……」

あぁイライラする。
そうこうしてる間にも瞳は遠くへ……もう家に着いてしまったんじゃないかと思う。

「あれ……?」

プチッ。
瞳以外のことに関しては短い堪忍袋の尾が切れる。

「お前そこは違うだろ!? もう貸せよトロくせぇ」
「あ、酷ッ!」

ブツブツ文句言ってるのなんか知るか。

「うるせーなぁ、お前に任せてたらいつまで経っても終わんねーじゃねぇか」

しかし苛立ちは隠せず、感情を露に言った。
日直当番の相方は呆れ交じりの視線でオレを見て、溜息と一緒に一言。

「ほんとにアンタってあの先輩のこと、馬鹿みたいに好きなのね」

“馬鹿みたい”は余計だ。
無視するオレなどお構いなしに、楽しそうに身を乗り出してくる。

「今時アンタみたいに堂々と力押しって珍しいんじゃない? あたしは見てて面白いけどさぁ、カノジョ鈍感っぽいし?」

カンペキ空回ってるよねー。
笑いながら、手に持ったシャーペンをくるりと回す女(日誌は結局オレが書いている)

「……あぁ、知ってる……」

キッパリ言い放つ女に溜息をついて、客観的に見てもそうなのかと少し凹んだ。

カタン。

小さな物音。普段は全然気にならないそれが、今回ばかりは異様に気になって仕事を放り出して廊下へ出た。
パタパタパタ……小さくなって消える足音と、置き去りにされた荷物。
見覚えのあるそれには、よく知ったキーホルダーの飾りが付いて、持ち主を知らせた。

「瞳……?」





教室でのやりとり(瞳ちゃんが聞いた会話)のあたりをぐっちゃん視点で。

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