Vischio

このあと現実世界EDシーンにいくといいな妄想

『刻の書』だかなんだか知らないが、普段は冗談で済ますことが現実になっていく。
痛みの退かない傷口、下がっていく体温。このまま後悔するよりは、とお前の手を取った。

「愛してる」

告げるつもりなんてなかった。
言ってもお前を困らせるだけだと十分過ぎるほどわかっていた。

それでも。
少しでも、お前に覚えていてもらいたかったんだ。

愛してる。ずっと愛してた。知らないうちに──

最後に見たのは、涙でぐちゃぐちゃになったお前の顔。
泣くなよ。
その声はちゃんとお前に届いたんだろうか。

◆◆◆

『……紅の王子、ルイを……』

慈愛に満ちた声を遠くに捉えたのは白い世界。
ルイを? 聞こえねぇよ。

幸せにして──

声はたぶんそう言った。
オレだってそうしてやりたい。許されるなら……
なにも見えない空間に向かって憤りをぶつけると、ゆらりと世界が歪み、白さが増した。
それが眩しくて耐えきれず、オレはきつく目を閉じた。

「…………は?」

次に目を開いて映ったのは白い世界ではなく、白い天井。

「あ、れ? え? オレ、」

どこだここ。
現実に戻って来たんだろうか。
ルイ……瞳は、どこだ?

死んだはずの身体を勢いよく起こす。長く眠った時のようにあちこちが痛かった。

「痛ぇってことは……生きてるな、オレ」

実感した途端、濁流のように色々な記憶が流れ込んできた。
ソレと、異世界での思い出と、現実での記憶とがごちゃごちゃになって気分が悪い。

ゆるく呼吸しながら情報を整理する。

『──今度こそ幸せに』

合間に微かに聞こえた声は掻き消えて、残ったのは“今”のオレ。

「…………瞳」

オレはいてもたってもいられずに部屋をでた。

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