カラクリピエロ

大捕物(竹谷)


大捕物(1)

その日、私は学園長先生のおつかいから戻ってきたところだった。
小松田さんの差し出す入門表に記名して、ようやく帰ってきたと実感した私が一息を吐き出したところに彼は突然現れた。虫取り網を片手に。

「小松田さん、こっちにこれくらいの虫飛んできませんでした?」

ぼさぼさ頭に葉っぱをたくさんからませて、顔には擦り傷をつくった忍たま5年生。
言いながら親指と人差し指で間隔をつくる。色はこうで羽がこんなでと続く説明を耳にいれながら勝手に血の気が引いていた。

(冗談じゃない!)

私は虫が大の苦手だ。蝶やトンボくらいなら遠巻きに眺める分には平気だけれどそれ以外は無理、嫌、取り乱すこと間違いなし。

みかけてないねぇ、とおっとり返事をする小松田さんの返答に肩を落とす忍たまに、私は懐から香を取り出して押し付けていた。
当然不思議そうに私を見る忍たま。

「こっちが虫除け、こっちは虫寄せ。上手くつかえば捕まえられると思う」
「え…?」
「なるべく早く、迅速に、早急に、一匹も逃さず捕まえてください!」

忍たまの返答を待たず、私はきょろきょろしながら(もちろん虫がいないかを確認している)足早に長屋の方へ向かった。

(部屋の入口に虫除けを焚かなければ…!)





「どうしたの八、ぼーっとして」

食堂内、いつもの顔ぶれで夕飯を取っていると雷蔵が声をかけてきた。
気づかないうちに箸が止まっていたらしい。
横から兵助が「豆腐食わないならくれ」と言ってきたので器を渡す。

「…八が変だ」

早速手をつけておきながら何言ってやがる。
そうは思ったものの一人で溜め込んでいても俺には解決できそうもないので、仲間の手を借りることにした。

「実はさっきさ、」

事の起こりはいつもどおり生物委員で飼っている毒虫の脱走だ。
もう日常茶飯事と言ってもいいくらいの出来事に声援を送られることも珍しくない。それよりも手伝ってくれと言いたいが。

で、学園内を走り回っていたら丁度外から帰ってきたらしい生徒が香をくれた。
虫除けと虫寄せ。外で使って効果があるのか半信半疑だったけれど(実はいまでも偶然かもと思ってるけど)数箇所で焚いた虫寄せに標的がいたのだ。他にも色々いたのでついでとばかりに捕まえておいた。

「ふーん…だから今日はいつもより早く終わったんだ?」
「そう。で、その礼を言いたいんだ。もらったとき突然で反応できなくてさ」
「八、お前それでも忍か?」
「仕方ねぇだろ」

こっちを向いてからかってくる三郎に、溜め息混じりに返す。

「勘右衛門、しょうゆ取ってくれ」
「はいどうぞ。その恩人さんは上級生?それとも下級生?っていうかどんな子?」
「…歳は…わかんねぇ。背格好からして忍たまの三年か四年だとは思うんだけど」
「瞳の色は、髪の色は、長さは……というか、小松田さんに名前聞いたらよかったんじゃないか?」
「それだ!」

矢継ぎ早に質問を重ねる三郎の最後の台詞に思わず立ち上がった。
すぐに食堂を出ようとした俺を、包丁を片手に持ったおばちゃんが睨む。もちろん、全部食いますとも。



風呂の前にと小松田さんのところを尋ねてみる。なぜか他の四人も一緒だ。

「おや、竹谷くん。また虫が脱走したの?」
「ああ、違うんです。あの、さっき俺が来たときに戻ってきた子なんですけど」
苗字名前ちゃんかな、彼女がどうかした?」

苗字名前か。
聞いた名前をしっかり覚え………彼女?

「小松田さん、彼女って!?」
「? 名前ちゃんはくのたまの五年生なんだよ。くのたまは上級生になるほど少なくなっちゃって寂しいよねぇ…」

くのたま、の言葉にしばし思考が停止する。
俺たち忍たまといえば、くのたまの“実習”の犠牲にあうのは当たり前、それも今年で五年目だ。条件反射で身構えてしまう。

「……でも、八が貰ったのはちゃんと効いたんだよね?」

小さく雷蔵が呟いたことにハッとした。
そうだ、俺は礼を言いたいんだ。



――しかし、どうやって接触しよう。
夜が明けた今日、俺は肝心なことを考える。
くのたま長屋は男子禁制だし、っていうかそれ以前に近づきたくない。いかにも罠満載っぽいし。
名前と外見はわかっているものの、苗字名前は委員会にも入っていないようで(くのたまは人数のせいか希望者だけらしい)全く会う機会がない。

今日は偶然にも休日だから、運が良ければ街へ出掛けるところに会えるかもしれない。

(でも昨日おつかいから帰ってきたっぽいしなぁ…)

うんうん唸りながら飼育している動物の世話に向かっていると、視界の端に動く桃色が見えた。
反射的に振り向くと学園長の庵に向かうくのたま。

「な、なあ、ちょっと!」

俺は気づいたら声をかけていた。



大捕物(2)

切羽詰った声色に振り向くと、昨日会ったぼさぼさ頭の5年生。
驚いたように目を見開いて、呼びかける姿勢で止まっている。
…これは、私から声をかけなおしたほうがいいのかな…

「…私?」
「あ、え、ああ、うん。君、で合ってる」

そう言ったきり黙ってしまう彼に、私は首を傾げるしかない。
おつかいの報告(学園長先生が今日でいいと言ってくださった)へ向かうから、用件なら早くして欲しいんだけど。
ビクビクしているようにも見えるのは私がくのたまだからか。
今まで散々いたずらしたもんね、と思わず納得してしまう。

「あの、」
「あ、悪い、えーと、お前さ、生物委員にならないか!?」
「は!?」

いきなりなんなの?
思わず一歩距離を置くと、茂みから小石が飛んできてぼさぼさ頭に命中した。

「いでっ」

そこで私は初めて彼の後ろに数人の気配を察知した。
彼らから会話を交わしている気配はするものの、聞き取れない。
――私、からかわれてる?

「…せっかくのお誘いですがお断りします」

これ以上関わるのも面倒くさい。
私は授業を思い出しながら笑顔を作り、さっさと学園長の庵に向かった。





いやー、びっくりした。
偶然て重なるもんなんだなぁ。
たまたま居合わせたくのたまが昨日の子だなんて。はっはっは。

「びっくりしたで済ますな!」

野次を飛ばしてくる三郎を振り返る。
さっき石投げたのはお前か!

「あ、それ僕」
「雷蔵……」
「八左ヱ門さ、なんでいきなり勧誘したの?」
「俺にもわかんねぇ」
「彼女ドン引いてたな。…帰りは警戒してるんじゃないか?」

兵助が淡々とこぼす内容が妙にしっくりくる。
まずい。このままじゃろくに話も出来ないんじゃないか!?

…………よし。
――捕まえよう。

「…………どうしてそういう結論になるのさ」
「アホだから」

グッと握りこぶしを作る俺の後ろで雷蔵と三郎が呆れた視線を投げてくる。
俺の今の目的は苗字名前に礼を言うことだ。
逃げられたら意味ないだろ。頼む、協力してくれ。


+++


「――うむ、確かに。ご苦労じゃった、今日はゆっくり休んでくれ」
「ありがとうございます」
「…ところで名前
「はい?」
「……いや、気をつけてな」

学園長はなにやら楽しそうだけど、彼が“気をつけろ”ということは何かあるんだろう。
思い浮かぶのはさっきの忍たまくらい……だけど、意味がわからない。
確かに昨日接触した。けど、あれには仕掛けなんて何もないし(第一ほとんど自分のためだし)忍たまに害があったとは考えにくい。
今までの仕返しだとしても…今更すぎる。

「うーん…私、他に何かしたっけ…?」

なんにしても罠が仕掛けてありそうな地面はなるべく歩きたくない。
ひょいと木の上に飛び上がると、その瞬間を狙っていたかのように足に縄が巻きついた。

「!」

思い切り引かれて身体のバランスを崩す。
反射的に目を瞑ると、ぐるんと逆さに吊り下げられたところで止まった。

「あらら、案外どん臭い?」

逆さになった私に声をかけてきたのはさっきのぼさぼさ頭じゃなかった。
忍装束は同じ五年の色だけど……っていうかニヤニヤ笑いやめて欲しい。

「あいにく…実技の成績は悪いの」
「へぇ…ならこのままおとなしく――」
「三郎早く!」

独り言のように呟くニヤニヤ男とは逆側からもう一人の声が聞こえたけれど、それを最後まで聞く義理もない。
私は懐から出した苦無を投げつけて縄を切ると宙返りして着地した。

「うわっ」

……おまけで投げた苦無は運よくもう一人に命中したらしい。

(これが実技試験でも発揮できたらなぁ…)

私は内心嘆きながら溜息をついて、その場を後にした。
――もしかして木の上も危険?




「…あの女、なにが“成績は悪い”、だ…」
「……とりあえず、これ抜いてくれるかな……」
「雷蔵も油断しすぎだぞ」
「うん、ごめん。でも三郎にも言えるからね」



大捕物(3)

忍たま長屋の屋根の上、私は必死で走っていた。
後ろからはぼさぼさ頭の忍たまが鉤縄片手に追ってくる。

「待てって!話するだけ!」
「だったら武器は必要ないでしょ!!?」

あと少しで屋根がなくなる。
でも地面には落とし穴がある気がしてならない。焦りながらチラと下を見ると奇遇にも見知った姿を見つけた。
ヒュッと足元を鉤縄が通る。
私はそれを避けながら目標に向かって落下した。

「伊作先輩レシーブ!」
「ちょ、え、えええええ!!?」

落とし紙の山を両手に持っている彼にそれはさすがに酷だったか。
でも止まれるはずもない。
私は伊作先輩を踏み台にして、近くの木に飛び移った。

「ごめんなさい先輩!おわびは後で必ずしますからー!」

背後で先輩の悲鳴と落下音が聞こえる。
…本当にごめんなさい。
両手で謝罪の形をつくりながらも移動はやめない。

――ああ、擦り傷だらけになってそう。

なんで私、せっかくの休日にこんな目にあってるんだろう。
ようやくおつかいが終わって、久しぶりに甘いものでも食べながらのんびりゴロゴロする予定だったのに。
…それもこれもあのぼさぼさ頭のせい。

沸々と怒りがわいてきた。
そうだ、やられっぱなしなんてくのたまらしくない!
ぴたっと足を止めて両手を握り締めた私は、直後その意思を折られた。

ピュイィィィ、と高らかに響く指笛。
呼応して聞こえた鳴き声は獰猛な獣のそれ。

「あの男…そこまでする!?」

っていうか学園の動物を私用に使うなよ!!
こうしてはいられない。少しでも早くくのたま長屋に戻らなければ。
…と、私は周囲を見渡して愕然とした。

基本的にくのたまは、こちらの敷地内には滅多にこない……そう、つまり……

「迷ったの?」
「ひぇ!?」

木の上でだらだら冷や汗をかいていた私は突然聞こえた声に飛び上がった。

「おっと、おとなしくして、危ないから。兵助、そっち落とすよ」
「ああ」

だ、だれ。
いつのまにか縄巻きついてるし――

「っていうか落とすの待って!」
「あ、ごめんね」
「きゃぁぁぁあああああ!!」

身動きできないまま落下ってどういう拷問なの!
きつく目を瞑ると、ド、と身体に衝撃があった。

地面じゃ、ない、みたい。
怖かった、ほんっと怖かった!なんか痙攣してるし!涙でてるし!

「…大丈夫か?」
「っ、」

まつげ長!!!
――じゃなくて!

「ええと、大丈夫、なんで。降ろして、くだ、さい」
「少し待ってくれ」
(えええええ)
「勘右衛門、」
「わかってる」

八左ヱ門やりすぎだよ、と小さく言って、私とまつげ忍たまより先に地面に降りた黒髪の忍たまは、音もなく姿を消した。近づいていた鳴き声が遠ざかったから、きっと操っていたぼさぼさ頭にでも報告に行ったんだろう。

「――あのー、もう降ろしてくれませんか」
「あ、そうだな」
「いえ。…………あの、縄」
「それはごめん」

内心で舌打ちし、溜息をつく。
縄抜けできないように縛られているのがまた憎らしい。
ここで必殺女の武器、別名涙のひとつでも出せればよかったんだけど、あいにく出せそうもない。
傍らのまつげを筆頭にぞろぞろ集まってくる五年生に囲まれている姿は傍から見たらいじめだ。

「……私、何かしたんでしょうか」

もうひたすら面倒くさい。
投げやり気味に問うと、ぼさぼさ頭がいきなり目の前で正座して勢いよく頭を下げた。



大捕物(4)

「すまん!」
「……は?」
「ごめんな、全部俺が悪いんだ。こいつらは俺に協力してくれただけで…」
「はぁ…それで、どうしてこんなことに…?」
「いや、ほんとは昨日のお礼を言いたかっただけなんだ。でもいきなりあんなこと言ったから警戒して話聞いてくれないかもって思ってさ、つい」

つい、にしては全力出しすぎ。
途中からほんとに怖かったんですけど。

「ともかく昨日はありがとう。おかげで助かった、後輩たちもすげぇ喜んでさ……で、モノは相談なんだが、」
「お断りします」

にっこりとくのたまの笑顔で。
私は彼の言葉を全力で拒絶した。

「そこをなんとか!な、苗字!」
「気安く呼ばないで。大体女性を五人がかりで追い詰めて縛り上げて、頼みごとを聞いてもらえると思ってるなら認識を改めたほうが今後のためかもね」

溜まった鬱憤を晴らすように言えば、慌てたぼさぼさ頭が縄を解いてくれた。
見るからに凹んで「ごめんな」と告げてくる様子になんだかこちらが悪いことをしている気がしてしまう。
このぼさぼさ頭を見守っているらしい四人はいつのまにか遠巻きにしているし…なんだろうこの状況。

「ほんとにごめん。お詫びに俺でできることならなんでもする!」
「…………なんでも?」
「ああ!」

聞き返す私に返事をする彼は満面の笑み。
思わずつられて笑っちゃうような、清々しい笑顔だった。
後ろでは「ばか、くのたまにそんなこと言うな」等双子(?)が騒いでいたけれど、目の前のぼさぼさ頭はそれを「あっちは気にすんな」とこれまた笑顔で一蹴してしまった。

「……今度実習があったとき、問答無用でつきあってくれる?」

今までくのたまから散々な目にあっている忍たまへ、あえての提案。
彼は一瞬グッと声を詰まらせたものの、やっぱり笑顔を見せた。
――へぇ、忍たまにもいい奴っているのね。
毎回伊作先輩に頼み込んで犠牲になってもらってる身としてはとてもありがたい。

「――で、苗字、生物委員に入」
「お断りします」
「せめて全部言わせてくれよ!」
「全部言われても無理なものは無理。私、虫は大の苦手だから」
「…どんくらい」
「群れでもいようもんなら焙烙火矢を二、三個投げつけて四年の田村三木ヱ門からカノン砲奪ってでもぶっ放す勢い」
「そっか…じゃあしょうがねぇな…」

あからさまに肩を落とすぼさぼさ頭に少しの罪悪感。
私お人よし過ぎるんじゃないの?
軽く膝を叩いて立ち上がりながら大きく溜息を吐き出す。
生物委員会は絶対に入らない。否、入れない。でも――

「…名前、」
「え?」
「名前、教えて。ぼさぼさ頭の五年生としか認識できないのは困るから」
「ぼ――」

私の言葉で遠巻きにしていた四人が噴出した。
それを無視して目の前の彼を見つめていると、彼はどこか気まずそうに視線を泳がせる。

「竹谷、八左ヱ門」
「竹谷くん」
「竹谷でいい」
「…じゃあ、竹谷。委員会に入るのは無理だけど、昨日の香でよければ調合することはできるよ」
「ほんとか!?」
「ええ。有料ですが」

わざわざ丁寧に言って笑顔を作った。商売には笑顔、これ基本よね。

「金とるのかよ!?」
「当然でしょ、材料費だってただじゃないんだから。交渉次第で色をつけてあげることはできるけど、無料は困るの。昨日のはたまたま試験作で大量に作ってたのをお裾分けしただけ」
「……」
「呼び出してくれれば応じるから、いつでも来て」

ううむ、と考え込んでしまった竹谷に声をかけると今度は見守っていた四人に囲まれてしまった。
もう帰りたいんですけど。

「私は五年ろ組の鉢屋三郎だ」
「同じくろ組の不破雷蔵です。ちなみに八…八左ヱ門も『ろ組』だよ」
「はぁ、どうも」

唐突に始まった自己紹介にとりあえず頷く。
双子かと思ったのに苗字が違う。
うーん、こんなとき忍たまの情報に疎いと困るな。
まぁ特に影響なさそうだし……聞くのも面倒だし、どうでもいいか。

「久々知兵助、五年い組」
「同じく尾浜勘右衛門。よろしくね」

にこやかに右手を差し出されて反射的に握手をする。軽く上下に振られていると、鉢屋がニヤリ笑いで「お前は?」と聞いてきた。

「…知ってるんじゃないの?」
「名乗ったら名乗り返すのが礼儀じゃないのか?」
「ッ、くの一教室五年、苗字名前。これでいい?」

ムっとして言い捨てるように名前を告げる。
そのままくの一教室へ帰るつもりだったのに……

「――尾浜、くん」
「ん?」
「手を離してくれない?」
「でも名前はくの一教室までの道わかんないでしょ?」

いきなり名前呼びか。
と、ツッコミたい気持ちもあったけど尾浜の言うとおりだったから、渋々頷く。
連れてってくれるのは助かるけど、手を繋ぐ必要はないはず。

「さ、いこいこ」
「ちょ、ちょっと……あ、竹谷!」

ぐいぐい引かれる力に転びそうになりながら振り返る。
竹谷はまだ何かを考えているようで、地面に座り込んだままだった。
私の声に反応して顔がこっちを向く。

「お客さんなら大歓迎!いつでも待ってるから、是非ご贔屓に」
「…ああ、またな!」

手を振って言うと、竹谷は少し困ったように笑って手を振り返してくれた。



おまけ。伊作と会話

「…失礼しまーす…」
「やあ名前、待ってたよ」
(うわあ…すっごく怒ってる…)
「ほら、こっちきて。またあちこち擦り傷つくって…せめて顔は気をつけるんだよっていつも言ってるだろ?」
「う……わかってるんだけど、つい」
「さっきは随分派手に動いてたみたいだけど」
「うん、助かった」
名前
「ごめんなさい。……まだ怒ってる?」
名前の世話は慣れてる」
「え、じゃあ何で不機嫌?」
「最近ここでしか会わないじゃない。いつの間にか“先輩”って呼ぶようになっちゃってるしさ。名前が“兄さま”って呼んでくれるの好きだったのに」
「…さすがに私も14だし、くのたまだし…馴れ馴れしくしすぎるのも迷惑かなって」
「お前の迷惑なんて今更だよ」
「酷い!………………伊作、兄さま」
「うん、よくできました」
「いったぁぁあああああい!!痛い痛い!お、乙女の柔肌になんてことを!」
「それくらいしないと、名前はまたすり傷つくって来るだろう?」
「それは兄さまに会いたいから!」
「はい、嘘をありがとう」
「~~~~ッッ!!」





幼馴染という設定。

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