カラクリピエロ

朝の風景with久々知 室町ver.


さらりと前髪を梳かれる感覚に薄く目を開ける。
私の方に伸ばされていた手が一度動きを止めて、いじっていた髪の毛を離した。

「おはよう名前

くす、と小さく笑われた後の囁くような甘い声が心地いい。
朝から久々知くんに会えるなんて、いい夢だなぁ。

勝手に目元が緩む。
そのまま見つめていたら、久々知くんは優しく微笑んで頬をなでてくれた。

温かくて気持ちいい。
目を覚ましちゃうのがもったいない。

なるべく長く夢を見ていたくて、目を閉じながら身体を丸める。

「寝ぼけてるのか?」

微かに笑いが混じった囁きが耳に届き、腰に腕が回ったと思う間もなく引き寄せられた。
そのまま頬にちゅ、と軽い口付けが落ちてきてくすぐったい。

(――……って、あれ?)

ゆっくり瞬いて寝転がったまま上を向く。
同時に、久々知くんの指が頬を掠めながら、前の方にこぼれた髪を耳にかけなおしてくれた。

「今日は休みだし、まだ寝ててもいいけど」
「え……」
名前?」
「え…、あ、うぇ!?」

一気に覚醒して身体を起こすと、久々知くんがぱちぱち瞬きをして顔を赤くさせた。
私に合わせて起き上がる久々知くんはあぐらをかき、視線を泳がせつつ私の寝巻きの前を直す。
布越しに伝わってくる体温に大きく心臓が跳ねて、脳裏にチカチカと昨夜の記憶が蘇った。

熱い吐息と声と、一晩中離してもらえなかった身体。

カーッと足元から頭まで一気に熱くなるのがわかって咄嗟に俯けば、視界に入る久々知くんの手。

「……っ」

目のやり場が無くて久々知くんを見ると、彼は困ったように眉尻を下げて笑う。

「――そんな顔されたら、また押し倒したくなる」

驚いて思い切り首を振ると、久々知くんが笑顔で私の腕を引っ張った。
咄嗟に目を瞑ったらぎゅうと抱き締められて、こめかみに唇が当たる。

「我慢するよ」
「ひゃっ」

声と一緒にふっと耳に息を吹きかけられて、思いっきり肩が跳ねてしまった。
逃げようとしたのに、久々知くんの両腕が檻みたいに腰に回されてて逃げられない。

「無理させたもんな」
「そ、れは、言わな…、あっ」

もがいて距離をとろうとする私の行動なんて無駄だと言いたげに、久々知くんが私の耳をかじる。
軽く歯を立てられた直後に舐められて、身体がぶるりと震えた。

Powered by てがろぐ Ver 4.4.0.