カラクリピエロ

暇をもてあました五年生の遊び


※キャストでいやな予感がしたらブラウザバック。
※久々知は自覚済み。

【出演】
赤ずきん:久々知兵助
おかあさん:不破雷蔵
おばあさん:鉢屋三郎
狼:苗字名前
狩人:竹谷八左ヱ門
語り部:尾浜勘右衛門





昔々あるところに男の子がいました。男の子はおばあさんからもらった赤い頭巾が大好きで、毎日毎日そればかりを身につけていました。

そのうち、彼は“赤ずきん”と呼ばれるようになりました。

「さあ赤ずきん、ここにお団子の詰め合わせととっておきのにごり酒があるから、これをおばあさんのところまで届けてきてくれるかな。おばあさんは病気で弱っていらっしゃるけど、これできっと元気になるから」
「…酒と甘味で元気になる病気なんて聞いたこと無いけどな」
「いいから行ってきてね兵助、話が進まないから」

ボソリと呟く赤ずきんを家から押し出したお母さんはにこやかに手を振りながら、赤ずきんに向かって注意をします。

「寄り道しないでまっすぐおばあさんの家に行くんだよ。分かれ道に気をつけて!」
「そんなところで迷うのは雷蔵くらいだよ」

優しいお母さんに見送られながら、赤ずきんもにっこり笑顔で答え、森への道を踏み出しました。

おばあさんのお家は赤ずきんの家からだいぶ離れた森の中にありました。
赤ずきんが森へ入ると、突然狼が顔を出しました。

「こ、こんにちは、赤ずきんちゃん」
「…………名前、可愛いな。似合う」
「ちょ、久々知くん!?」

赤ずきんは狼の出現にびっくりしながら、何か用ですかと尋ねました。

「え、えっと、赤ずきんちゃんはどこへ行くの?」
「病気のおばあさんのところだよ」
「その籠に入ってるのはなあに?」
「団子とにごり酒…だったかな。雷蔵から三郎への見舞いだよ」
(じ、自由すぎる……)

赤ずきんは狼の問いかけに動じることもなく、笑顔で答えました。

「赤ずきんちゃんはおつかいの途中なんだね。ところでおばあさんのお家ってどこにあるの?」
「ここをまっすぐ行った森の奥深く、赤い屋根だからすぐにわかると思うぞ」
「そうなんだ、きっと可愛いお家だろうね」
「どうだろうな」

素直に答える赤ずきんに、狼は心の中で計画を立てました。
若くて活きのよい男の子は、きっとおいしいに違いない。
ついでに森の奥に住むおばあさんも食べてしまおう。

「――ねえ赤ずきんちゃん、おばあさんにお花のお土産はどう?この辺に咲いている花はとってもいい香りで病気にも効くって噂だよ」
「寄り道の誘いか」
「う、うん、そう……どうかな」

狼の笑顔にほだされた赤ずきんは、そこまで言うならと花を摘み始めました。

「籠いっぱいのお花はすごく綺麗だよね」
「なら名前のために摘むよ」
「いやいやいや嬉しいけど、そこはおばあさんのためって言って!?」

花摘みに夢中になった赤ずきんの後ろで、狼は自分も花を摘むフリをしながら足音を忍ばせて教えてもらったおばあさんの家を目指します。

「赤い屋根の可愛いお家……可愛い、おうち……?」

家を発見した狼は早速トントンと戸を叩きました。

「そ、そうだった…ごほん、こんにちはおばあさん。私赤ずきんです、お団子とにごり酒をお見舞いにもってきました、開けてください」
「開いてるよ、勝手に入っておいで。私は今弱っていて起きられないんだ」
「ではお邪魔します」

しめしめと思いながら、狼は扉を押し開きました。
動けないと言った通り、おばあさんはベッドの上で横になっています。

「ふっふっふ……私は赤ずきんじゃなくて狼だよ!三郎…じゃなくておばあさんを食べにき……うわっ、ちょ、」
「なんだ、私を食べるんだろう?」
「いや、え、なんで!?」

狼は動けないおばあさんの寝ているところへ行って、ぱくりと一口で飲み込んでしまいました。

「ほら、勘右衛門も私がぱくりって…は、な、し、て、よ!」
「私はどちらかというと食べる側のほうが向いてるんだ」
「そんなの今どうでもいいでしょ!っ、や、ちょ…」

あー…、狼はおばあさんのベッドを蹴りつけるようにして布団を整えると――

「さすが勘右衛門!」
「うぉ!?って、らいぞ…」
「三郎、いい加減にしようね?」
「ベッドの下からってかなりホラーだぞ…」
「うんうん、そうだね」
「痛いひっぱるな!」
「さっさと退場してよ三郎ばあさん!」

――はぁ……整えると、おばあさんの着物を着て、おばあさんの頭巾をかぶって、ベッドにごろりと横になりました。

一方赤ずきんは、おばあさんのために籠いっぱいの花を摘んで上機嫌でおばあさんの家へ向かいます。

到着した家は戸が開きっぱなしになっていました。
不思議に思いながらも中に入るといつもとは違う雰囲気です。

「調子はどうだ?」

赤ずきんは声をかけながらベッドへ近づきました。
横になったおばあさんは頭巾をすっぽり下げて、布団を息苦しいほど上げていました。

「随分と大きな耳だ」
「赤ずきんちゃんの声がよく聞こえるようにだよ」
「その大きな目は?」
「(近い…!)あ、赤ずきんちゃん、の、姿がよく見えるように」
「じゃあ、この俺より小さい手は?」
「え、えっと、赤ずきんちゃんに、握ってもらえるよう…に?」
「…………ちょっとタイム」
「いやいやいや、タイムとかないから!でも私もちょっと限界なんで!い、いただきます!」

言うが早いか、狼はベッドから飛び出して赤ずきんを一口でぺろりと食べてしまいました。

「…ごちそうさまでした!」

満腹になった狼はおなかをひとなでして、またベッドに潜り込み寝そべって休みました。

「!? っ、久々知くん、だ、だめだよ早く出て行ってくれないと…!」
「さっき三郎に何された?」
「は?何も…ほんと!なにもされてない!って近い近い近い近い!!!!」
名前、言わないと」
「ほんとに何も!腕つかまれて押さえつけられただけです!」
「されてるじゃないか…………こういうことだろ?」
「~~~~ッッ、か、か、狩人さーーーーーーん!!!!」

丁度そのとき、表を通りかかった狩人が異変を感じておばあさんの家に飛び込みました。

「た、たけ、竹谷ぁ!久々知くんが変だよ!」
「……おい。このぐっちゃぐちゃ状態でどうやって続けんだよ」

…………だよねぇ。
おれ頑張ったんだけどなー。兵助と三郎が暴走するのが悪いよ。

「っていうか俺の見せ場ごっそり無くなってるじゃねーか!」
「ご、ごめん…ごめんね……」
「八、名前を泣かせるなよ」
「兵助のせいだろーが!」
「だな」
「三郎もね」

でも続いてたら八どうしてた?

「どうって……俺が赤ずきんとおばあさんを救出して、狼をこらしめて終わりだろ?」
「この“狼の腹を…”って表現はえぐいよね」
「当然、邪魔するけどな」
「久々知くん、そんなに赤ずきんちゃん嫌だったんだ」
「俺と名前が逆ならよかったんだけど」

じゃあ次はそれを活かすってことで。

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