庄左ヱ門とのやり取りが終わったから、消えた二人の行方を追おうと思ったけど、あの二人は一体どこへ行ってしまったんだろう。
「うーん…」
屋根の上?校舎の中?それとも裏山だったりする?
手がかりも何もなしで適当にウロウロしていたら、いきなり草むらから飛び出してきた人に驚かされた。
「わっ、ごめ…って名前!」
私を避けるために大きくバランスを崩した勘右衛門が転びそうになったから、思わず手を伸ばす。掴んだはいいけど引っ張られる力に逆らうことはできなくて、結局一緒に転んでしまった。
「いててて……」
「ご、ごめん勘右衛門!」
咄嗟に支えてくれたのか、私は勘右衛門を下敷きにしていたから痛くもなんともない。
助けるどころか助けられている有様に慌てて起き上がって、勘右衛門に自分の手を差し出した。
勘右衛門が私の手を掴む直前、横から伸びてきた手が代わりに掴む。
なにが起きたのかわからなくて何度も瞬きをする間に、それを強く引かれてよろけ、手の主──久々知くんの胸元に顔をつっこんでいた。
「はー…もー、マジで疲れたしさあ、もう終わりにしない?」
勘右衛門の声を背に顔をあげる。
久々知くんは一度口を開いて何かを言いかけたものの、私を片腕に抱えたまま、何も言わずに勘右衛門を引き起こした。
久々知くんの腕が腰に回っているのがとても恥ずかしい。むずむずして身じろぐと、久々知くんが「終わったのか」と呟いた。
「え…あ、し、質問?」
「うん。誰だ?」
「?」
「…兵助、それじゃ絶対わかんないと思う」
溜息をつきながら言う勘右衛門にあわせて頷いてみる。
久々知くんは眉根をぎゅっと寄せると、搾り出すように「付き合うとしたら」と口にした。
言われた言葉を何度も反芻して、ようやく質問内容の二つ目だと思い当たった。我ながら鈍い。
「それなら不破くんって答えてきたよ」
「ちょ、名前!?」
妙に焦っている勘右衛門が言っちゃったんだ、と呟く。
腰に回されている腕の力が強くなって、久々知くんと接触してる面積が増えた。
自分の心臓の速さが直に伝わってしまいそうで、誤魔化すように声をだす。
「く、久々知くんは駄目って言われて、答えられなかったんだけど、庄左ヱ門が五年生の中でって指定してくれてね、それで…、ええと、だから…」
しどろもどろになっていくのは久々知くんとの距離が近すぎるのと、髪の毛がくすぐったいのと、また力が強くなったことで考える力が下がっているせいだ。
ええと、しか出てこなくなった役立たずの頭をなんとかして働かせようとしたけれど、全然駄目だった。
「…俺の答えでよかったろ」
「…………今度は、そうする」
「今度なんてない」
拗ねたような久々知くんの声を聞いて、ときめくってこういうこと、と改めて思いながら、久々知くんの胸元に頭を押し付けた。
-了-
「なんだろうこの…嬉しいのに嬉しくない感」
「当たり引いたのに罰ゲームやらされるようなもんか」
「八左ヱ門…それわかりやすいのかわかりにくいのか判断しづらい」
「いざとなったら三郎を囮にして逃げるよ僕!」
「雷蔵!?」
「頼りにしていいよね?」
「…ああ、任せろ!」
「三郎って案外扱いやすいよね」
「否定はしねぇ」
答01.おまけ
1379文字 / 2011.07.12up
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