お菓子をくれなきゃ…の段
「名前、悪戯させろ」
前置きも何も無く、ただ思いついたから、くらいの軽さで三郎が口にする。
当然、私の答えは「いやです」以外ありえない。
「知らないのか、今日は悪戯してもいい日なんだぞ」
「そんな三郎に都合のいい日があるわけないでしょう」
ちっちっち、とやけに楽しそうに指を振る三郎が手のひらを上に向けて、私の前に出した。
「悪戯されたくなければ菓子を寄越せ」
「? お菓子あげればいいの?」
「…………チッ、持ってるのか?」
隠そうともしない舌打ちをする三郎を睨みながら、懐を探ってみる。
たしかこの辺にあったはず――
308文字 / 2011.10.30up
edit_square