Kiss me baby,
※久々知視点
目の前にペタリと座り込んで、じれったいくらいの速さで手が伸びてくる。
そのまま両肩に置かれるの待ってから彼女の腰に腕を回した。
びく、と跳ねる身体に、クツリと勝手に声が漏れる。
「く、久々知くんは、」
「わかってる、もう動かない」
すでに真っ赤に染まっている顔を見つめて笑うと、名前が軽く唇を噛んだ。
「っ、見、すぎ」
「だってもったいないだろ」
思ったまま告げると名前は俺の肩に顔を伏せた。
名前は小さく唸り声を上げながら額を押し付けるようにしてくる。衝動のまま抱き寄せそうになって、彼女からわずかに視線をそらした。
名前の腰に回した自分の手を組み合わせるだけに留め、ゆるく息を吐き出す。
「目、瞑って?」
「やだ」
「ちょ、やだって…もう!」
「あ、名前、ずるいぞ!」
「ずるくない」
我慢だとか自重だとか、ぐるぐる回る単語を何度も言い聞かせながら答えたら、いきなり目元を覆われた。
強制的に視界をふさがれて、名前の手を外そうとしたけれど即座に「約束!」と声が飛んできてしまった。
「ちっ」
「舌打ち!?」
名前から、の条件は俺が動かないこと。
仕方ないと観念して、身体から力を抜いて自ら目を閉じる。
それがわかったのか、名前がそろそろと手を離した。
「開けちゃダメだからね」
「…わかった」
不本意だけど頷いておとなしく待つ。
肩に置かれたままの手が温かい。わずかに背筋を伸ばしたらしい名前の気配や、近づいてくる体温を意識して、緊張してきた。
初めてなわけじゃないのに。
鼻孔をくすぐる香りで余計心臓が跳ねる。
もう吐息がかかるほど近いはずなのに、名前が懸命に息を止めているのがわかる。
あと少し。
俺がほんの少し名前を抱き寄せるだけで、顔を近づけるだけで、触れられる距離。
いつの間にか俺まで息を止めていることに気づいたのは、ちゅ、と一瞬だけ触れて離れてしまった名前に合わせて、目を開けると同時に息を吸ったからだ。
元から赤かった顔を更に赤くして俺を見上げてくる。
恥ずかしいのか視線はせわしなく動いて滅多に合わないけれど――
「…………可愛い」
「そ、いうこと…言わないで…」
限界だったのか空気が抜けたように力を抜いた名前を抱き寄せる。
ぎゅう、と抱きしめるとわずかに身じろいで、嬉しそうに頬をすり寄せてきた。
そんなものを見せられたら、
「……名前」
「ん?」
「もっと」
「え?」
「していい?」
「そのうちさ、頼まなくても名前からしてくれるようになると思うんだ」
「な、なんで!?」
「俺が嬉しいから」
「…………そんな、理由、あり?」
「あんまり抵抗しなくな」
「きゃあああああ!!」
「く、くく…」
「いじわる!!」
プチリク消化。
キスする三秒前!な二人、でした。イチャイチャに慣れてきてる(慣れさせられてる?)名前さん。畳む
1230文字 / 2011.05.06up
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