カラクリピエロ

序(2)



「三郎から話は聞いておる。双方委員会を介して交流を深めたいとな!そこで、わしがこれを考えてみたというわけじゃ!」

「…………、……あの、学園長先生。あまり聞きたくないのですが“ツアー”…というのは」

色々とツッコミたいところはあるが(特に交流云々について)、気を取り直して一番気になった部分に触れてみた。

「うむ、よくぞ聞いてくれた!これはじゃな、ある程度期間を決め、全委員会を体験することができるという素晴らしい思いつきじゃ!」

「学級委員長委員会だけではなく…?」

念押しで聞くと、学園長は片目を開けてニヤリと笑った。

「それだけではつまらんじゃろ?」

学園長先生……余計なお世話すぎます。
鉢屋といい勘右衛門といい、学級委員長委員会には顧問含めクセ者しかいないんですか。

巻物の片方を持ったままの鉢屋を見る。
目が合うと、鉢屋は軽く片手を挙げて私から視線を逸らし、すまん、と口を動かした。

――珍しすぎて恐い。

(…………明日はきっと雨だ)

「あの~、すみません学園長先生、せっかくのお話ですが」
「却下!これは学園長命令じゃ!」
「ず、狡いです!」

思わず腰を浮かせて抗議すると、立花先輩に腕を掴まれた。
いつの間に側にきていたんだろう。

制されて渋々座り直す私に、学園長は「ほっほっほっ」と楽しそうに笑った。

「既に山本シナ先生にも伝えてある。お主の活動次第では今学期の成績に色を付けると言っておったぞ?」
「う……うぅ、」

どっちにしろ学園長先生の命令ならば従わざるを得ないけれど、シナ先生からの追加点はおいしい。

でも活動次第ということは、つまり顔を出すだけじゃなく真面目に参加してこいと…そういうことだろう。
ふいに、シナ先生の「頑張って」という声援を思い出す。

お茶の一杯でも飲みながら鉢屋の後輩自慢を聞いて『はい、終わり』で済むはずが、どうしてこうなったのか……

――お主ら委員長並びに代理に集まってもらったのは、苗字名前の訪問順、及び期間を……

そう告げる学園長先生の声をどこか遠くに聞いていた。

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