作法委員の暴走(3)
「実に致命的だな…」
「し、知っててけし、かけた、くせに…なんですか…!」
伝七と兵太夫に慰められながら、私は膝を抱えて情けなくべそべそ泣いていた。
彼らと同じく戻ってきた藤内が私の髪を結いなおしてくれているが、私がしゃくりあげるせいで上手くいかないらしい。
それでも文句一つ言わない藤内はやっぱり天使で良心に違いない。
溜息をつく立花先輩は額が赤くなっていた。
元が白い肌だからやたら目立って痛々しい…思い切りやりすぎただろうか。
(でも、あれは先輩が悪い!)
パニックを起こしたせいでなかなか止まらない涙を心配して、一年生二人が心配そうに見上げてくる。
それを思い切りぎゅうっと抱きしめてから、伝七が差し出してくれた手ぬぐいを受け取った。
喜八郎はといえば飄々としたまま「穴掘ってきます」と言い残し、先ほど出ていってしまった。
あの子はいつもマイペースで何を考えているのかわからない。
「こんな調子なら山本シナ先生が忍術学園一成績がいい私に相談する気持ちもわかるな」
さりげなく自慢をおりまぜる立花先輩に言い返す気力もない。
既に想い人は伝えてしまった後で精神力は疲弊しているし、騒いだせいで体力も尽きそうだ。
藤内にお願いしたら膝枕でもしてくれるだろうか…一年生を交えて川の字でお昼寝もいいかもしれない。
「名前」
「……はい」
「では、作戦開始だ!」
「……はい!?」
言うなり作法室から颯爽と出て行った立花先輩。
どういうことか図りかねて呆然とする私に、髪紐を操る藤内がある場所を告げた。
「…そこに行けってこと?」
「苗字先輩ちゃんとわかってなかったんですか」
「うん、伝七が教えてくれる?」
「仕方ないですね。そこには綾部先輩が掘った塹壕があるんです。立花先輩の計画では僕と兵太夫の罠を順に発動させ、相手の武器と道具を奪い、塹壕からの脱出が難しい状態にしてから落とすそうです」
「…それイジメって言わない…?」
「そこで苗字先輩の出番でしょう?」
兵太夫の付け足しで、ようやく状況を把握した。
――この仕掛け諸々、計画的犯行だと相手にばれたら印象最悪じゃないだろうか。
ただでさえゼロからのスタートなのに、これではマイナスになりかねない。
「藤内!」
「は、はい!」
「今日は委員会これで解散、改めて3人ともありがとね!」
挨拶もそこそこに作法室を飛び出す。
立花先輩は相手を罠にかけようと既に動いてしまっているから、呼び出しの段階で止めるのは無理だ。
せめて罠にかかる前に……怪我でもさせたら謝りきれない。
どうか間に合いますように!!
全てはここからの段
1107文字 / 2010.09.08up
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