カラクリピエロ

押せ押せスイッチ入ってる夢主

※久々知視点




――どうしてこんなことになっているんだろう。

俺の肩を押さえる弱々しい力を感じながら、真上にある彼女の顔を見上げる。
名前の顔は赤く、苦しそうに眉根を寄せて浅い呼吸を繰り返していた。

呼びかけたいのに声が出ない。
そればかりか、さっきから熱に浮かされたように頭がうまく働いてくれない。

部屋に充満する甘ったるい匂いのせいか。
原因を探そうと思うのに、それを邪魔するように名前の指が首筋を撫でていく。
ゆるりと頸動脈を伝うような動き。ゾクリとした感覚は快楽か恐怖かよくわからなかった。

「…久々知くん…」

名前が発する掠れ気味の声を聞きながらゆっくり瞬きをする。
寝巻きの襟元からそっと差し込まれる指先が異様に熱い。
これは夢かと尋ねるつもりで口を開いたけれど、音になる前に柔らかな感触に遮られてしまった。

「――…っ、ん……」

小さく漏れ聞こえた声に心臓が跳ねる。
同時に反応した指先のおかげで自分が動けることに気づいて、彼女の腕を捕まえる。
控えめに侵入してくる舌先を迎え入れて触れ合わせると名前の肩が震えた。
名前はすぐに身を引いたけれど、俺が腕を掴んでいたからか胸の上に倒れ込んでくる。

ふわりと甘い匂いが鼻孔をくすぐり、めまいがした。
浅く繰り返される呼吸はどこか苦しげで、密着する身体はやわらかく、熱をもって――――……熱?

「はっ…」
「…名前…?」
「……ふふ……久々知くん……」


内心焦りながらも名前を支えたまま身体を起こし、額に手を添える。
ちがう、と唇を動かす名前に見惚れていたら、そっと袖を引かれた。両手で俺の手を握った名前の誘導に視線もつられる。
俺にはない柔らかそうな曲線。ごくりと喉が鳴ったと同時、指先に心地よい弾力が触れた。

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