※久々知視点
「や…久々知くん、だめ!待って!」
「待たない」
なるべく名前の声を聞かないように画面に集中する。
早々に終わらせたくて起爆点に目的の色を配置すると、狙い通りに連鎖を起こす。
それはそのまま対戦相手――名前の方へ邪魔なオブジェとして降り注ぐ準備を終えた。
「ちょっ…、やだ、あ、あ、あ……あーーー!」
立て続けに画面を埋めていくオブジェに、俗に言う“窒息”状態へと追い込まれる名前。
――ゲームをしているだけなのに、悲鳴(?)のせいでどうにもアレな妄想を掻きたてられるのが困る。
画面を食い入るように見つめていた彼女ががっくりと項垂れて、“負け”を知らせる文字から俺の方へ視線を移した。
「…………ひどい」
開口一番、恨み言でも零すみたいに呟かれ、拗ねる名前の様子につい笑ってしまった。
「ずるはしてないだろ?」
「でも!久々知くんがこんなに強いなんて知らなかったもん!もう一回!」
身を乗り出して指を一本立てる名前は真剣だ。
“勝ったらなんでも言うこと聞く”ってルールでふっかけてきたのは彼女の方だから仕方ないのかもしれない。
「別に構わないけど…さっき俺が勝った分はそのままだからな」
「う…、わ、わかってるよ。だから今度はハンデ有りで勝負」
「それじゃ名前がずるくないか?」
「弱い者いじめ反対!」
「…………わかった」
気が済むまで付き合ってもいいけど、こんな美味しい条件を出されて手加減なんてする気はない。
回数を重ねるに連れて名前の負担が大きくなるんじゃないかと思いながら、「今度こそ!」と気合を入れてコントローラーを握り直す彼女をチラ見した。
こんな勝負なんかしなくても、名前の頼みを聞くくらいならしてやるのに。
落ちものパズルゲームvs久々知
豆腐部屋
768文字 / 2013.03.14up
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