カラクリピエロ

生物委員会(22.5)

生物委員の騒がしい声を聞きながら、三治郎の指示にしたがって罠作りを手伝う。
勘右衛門は生物委員会でもなければ私みたいに臨時参加というわけでもないのに、率先して動いたり口を挟んだり――私よりよっぽど生物委員の一員として役立っていた。

「三治郎、これで完成?」
「そうです!」
「でもさ……まあ実際見た方が早いな。名前
「ん?」
「ちょっとここ踏んで」

ずいっと差し出されたのは、たった今三治郎が完成させた第一号だ。

「三治郎のためだと思って」

思いっきり“怪しい”って顔をしたのに、勘右衛門は満面の笑みでそんなことを言う。
仕方ないな、と溜め息混じりに呟いて言われたところを踏めば、バキッ、と嫌な音。さらに足に落ちてくるはずだった捕獲用の籠は、あさっての方向に勢いよく飛んで行った。

「…………」
「…………」
「な?」
「な、じゃないでしょ勘右衛門!」

しかもこれじゃ私が踏み抜いたみたいだ。
普段ならこんなに気にしないのに、久々知くんと朝にした会話を思い出してちょっと落ち込んでしまった。

(……そ、そんなに重くないもん。たぶん)
「なに怖い顔してんの名前
「乙女心が傷ついたの」
「は?……ああ、あははっ」

きょとんとする三治郎の隣で笑いだす勘右衛門をジト目で見たら、手をひらひらさせて軽い調子で謝られた。

「これね、たぶんじゅんこでもこうなってたよ」

説明っぽいことをしだした勘右衛門に頷きを返すのは三治郎で、その顔はいたって真剣だ。
なるほど、とか確かに、と相槌が聞こえるから勘右衛門の言うことは正しいんだろう。

「まーだ気にしてんの?」
「……タイミングが悪かったの。錘って言われた後だったから……ちょっと、気になっただけ」
「なにそれ。まさか兵助に?」
「違う」
「じゃあいいじゃん」
「久々知くんは……そういうこと思ってても言わないもん」
「――名前はさ、兵助が優しいことしか言わないやつだって思ってんの?」

まるで鋭く切り込むようなそれに心臓がドクンと音を立てる。
普段とは違う調子に驚いて見返せば、勘右衛門は片手で顔を押さえて呻くような声を漏らした。

「あー…ごめん、これ今言うことじゃなかった。悪いな三治郎、続きやろう」
「え!?はい…ええと……」
「ほら名前!さっさと籠回収してきて!」
「ど、どこに飛んでったのかわからないんだけど!?」
「あっちだよ、伊賀崎がいる辺り」

雰囲気を一転させて、戸惑う三治郎にいつもどおり接するから私まで軽く混乱した。
勘右衛門が指差した方向に駆け出しかけて、毒蜘蛛がふらふらしてるかもしれないことを思い出す。慎重に足元を確認しながら進みつつ、勘右衛門の問いかけに対する答えを考えていた。





なんだかんだ鋭い尾浜くんが理想

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