カラクリピエロ

PHASE.1 堕天の道 03


「サキ、サポート頼んだ!」
「は、はいっ!」


詩を紡ぐクラスタニア兵に向かってナマエの得物が飛ぶ。
接触すると同時に電気が走り、そこかしこで悲鳴が上がっていた。


「先生は隊長さんよろしく」
「っ、悪いけど長くは持たないよ」
「そこはなんとか頑張って!」


ナマエが今使っている武器は故郷で対女性用にとシンシアに作ってもらったものだ。
――女性には常に優しく紳士的に接すること、傷をつけるなど言語道断。
メタ・ファルスにいたころ、まるで呪いのように刷り込まれたせいで女性に刃を向けられないナマエの苦肉の策だった。

五条が巨漢の隊長をひきつけている間に取り巻き兵の数をどうにか減らす。
サキのサポートもあって3分の1は相手の戦力を削れただろうかというころで、巨漢の隊長がドンと足を鳴らした。


「ふん、なかなかやるじゃねぇか!」


――嫌な予感がする。


「先生!」
「ああ、わかって――うわっ!?」


五条が武器代わりの医療鞄を構えたところに後衛のクラスタニア兵から詩魔法が飛んだ。
ナマエは足止めさせられた五条のところへサポートに入ろうか――一瞬、迷ってしまった。
その僅かな間に、彼女はファンシーなステッキを手慣れた動作で回転させていた。

後衛で詠唱中の呪文をかろうじて止めたナマエは五条の方へ足を踏み出す。
――ココナにVボード習っておけばよかった。そう思いながら懸命に駆けた。


ナマエさん!」


サキの叫びが聞こえる。
彼女のところは範囲外だろう、そうあたりをつけて五条とレーヴァテイルの間に滑り込む。


ナマエ!」


そこをどきなさい、と叱るような声音と共に腕を掴まれた。


「先生ごめん!」
「ぐっ、」


ナマエはそれに応えず五条を蹴りとばし、最後の抵抗とばかりに攻撃を仕掛けた。
放出された詩魔法にナマエの得物がぶつかる。



――押し負けたナマエの武器は、離れていたサキの近くにカランと音を立てながら落ちた。



ナマエ!!」



…ゲンガイさん?
宙に浮いて落ちるわずかな間、ナマエの瞳は懐かしい姿を捉えていた。

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