カラクリピエロ

PHASE.1 トコシヱ 13


「…………いいの?」
「はい!もちろんですっ!」


なんでもないことのように。それが当たり前だとでもいうように、サキは笑う。

――クラスタニアの要求に従う。
それがアオトとサキの決断だった。

今、ここにはナマエとサキ、タツミの3人しかいない。
五条は護送用の飛空挺の手配をしに診療所を出ているし、アオトは外へでたきり戻ってこない。


「…………」
ナマエ、サキたちが決めたことだよ」
「わかってる…わかってるけどさ…」


今にも文句を言いそうなナマエの様子に「わかってないじゃん」とタツミの声が乗った。


「だって…………ねぇ、サキ。ぼくついてっちゃダメかな」
「え!?」
「はぁ!?ちょっと、本気で言ってるの?」


何度も瞬きを繰り返すサキの横から思い切り不満気な声が上がる。
つい先ほど、一緒に堕天峰へ行こうと話をしたばかりだ。
一度ゲンガイに相談して塔へ侵入する方法を――そう話し合ったばかりだというのに。


「ごめん、タツミ。だってこのままじゃサキは良くて監禁最悪処刑だよ」
「…………や、やっぱりそうなんでしょうか」
ナマエ!不安がらせてどうするのさ!まったくぷーなんだから!!」
「機会を見てサキを逃がしたいんだ。移送したって事実があれば警告も撤回されるだろうし…」
「先生は?」
「説得して迷惑かけないようにする。サキはぼくが連れて逃げるから」


タツミが額に手をやって、大きく溜息をついた。


「……それで、ボクには何を頼むつもり?」
「さすがタツミ」


にっこりと楽しそうに笑うナマエに、タツミは再度溜息をついた。
やると言ったら彼は実行するだろう。彼の実力も知っているだけに「無理だ」とも言えない。


「あの、ナマエさん…これはサキが決めたことなんです」
「うん」
「だから、サキはちゃんとお約束どおりクラスタニアへ行きます!皆さんに迷惑はかけられません!」
「うん、サキはその通り動いてくれていいよ。ぼくが勝手にサキを誘拐するってだけだから」


相変わらず楽しそうに言い切ったナマエに、サキが絶句する。というよりは理解が追いついていないようだ。
全てナマエのペースで進むやり取りをみて、タツミは3度目の溜息をついた。


「タツミには、先に堕天峰へ行ってもらいたいんだ」
「…師匠にサキのこと話しておけっていうんでしょ?」
「よろしく」


――まったくあっさり言ってくれる。
諦めモードのタツミはナマエに向かって「無茶しないでよ」と忠告を残し、アオトを捜しに診療所を出て行った。

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