カラクリピエロ

PHASE.1 トコシヱ 12


蒼谷の郷からの道のりについて掻い摘んで聞いたが、ナマエには理解が追いつかない箇所がいくつかあった。
例えば“お星様の力”とか“脱ぐとパワーアップ”だとか。


「…脱ぐの…?」
「言っとくけど、ボクには関係ないからね」
「わかってるけどさー……」


ごく自然にタツミを見る。
にっこりと。なかなか見られない満面の笑顔で咎められ、ナマエは口を噤んだ。

途中から話を聞いていた五条は“お星様の力”に興味を持ったようだった。
彼は「奇跡の力」と呟いたきり黙り込んでしまった。



「――ナマエ、トコシヱはどう?」



ふいに、タツミは真剣な表情でナマエを見る。
ここでの暮らしだとか豪遊スポットだとか、そういう答えは求めていない。それがわかったから、ナマエも簡単に首を振るだけで返した。


「そう…蒼谷の郷方面もだめだった…さーしゃの方は?」
「さーしゃは開発の方もあるしと思ったから、ぼくもなるべく頻繁に行くようにしてたんだけど……だめだね」


2人して溜息をつく。
存在の片鱗さえつかませないハーヴェスターシャ。本当にいるんだろうかと疑問さえ湧いてくる。


「ねぇタツミ、大地の心臓ってさ…有名なのかな」
「は?どうしたの急に」
「…んー、ちょっと気になっただけ」


フィンネルが探しているかもしれないと言いかけてやめた。
やはり確証を得てからにしようと思ったからだ。
タツミは訝しげな表情でナマエを見ながらも、ちゃんと答えてくれた。


「想像でしかないけど、ごく一部しか知らないんじゃない?だって普通の人には使い道ないじゃん」
「……」
「知られてるとしても本に載ってるだけとか幻のアイテムとか…じゃなかったらボクたちがここまで来る必要なかったってことになるし」
「…だよね」


幻のアイテムか。
タツミから出た何気ない単語を反芻する。

――絶対、見つかるはずないって思ってたのに…

そう言ったフィンネルの言葉が浮かんで消えた。

保留にすると決めたのに、また引っ張り出してきている。
ナマエは自嘲気味に笑い、意見をくれたタツミに礼を言って話を切り上げた。

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