カラクリピエロ

PHASE.1 トコシヱ 10


「すみません、先生。人を捜しているのですが」


耳に届いたサキの名に、傍らにいた少女がピクリと反応した。
ナマエはそれを隠すように移動して、五条が口を開くよりも早く口を挟む。


「ルーファン、君が捜している子は来てないよ」
「…そうですか」


さらに空気が緊張する。
ナマエも、対するルーファンも笑顔なのに、まるでにらみ合いでもしているかのようだった。


ナマエ、あなたが僕を毛嫌いするのは構いませんが見つかったら教えてください。なにしろこの街の住人全ての命がかかっていますので」
「どういうこと?」


笑顔をやめたナマエにルーファンは満足した表情を浮かべ、クラスタニアがトコシヱを“クレンジング”しようとしている旨を伝えた。それをやめる条件がサキの引渡しであることも。

ナマエは思わず舌打ちし、自身の手を握りしめる。


「――卑怯だね」
「ええ、僕も同意見です。ということで皆さん、協力のほど宜しくお願いします」


軽く一礼し、ルーファンが去る。
扉が閉まる音を確認した後、タツミがやれやれと溜息をついた。


ナマエってさ、ルーファンには露骨だよね」
「そうかな」
「……はぁ……白々しいなあ。別に嫌いでもいいけど殺気立つのはやめてほしいよ」
「――あいつ敵じゃないのか?」
「ほら、アオトが誤解したじゃないか」


タツミが誤解を解いているのを眺め、ゆっくり深呼吸をする。
ナマエは出会った頃からルーファンを過剰なほど警戒している。
どうしてかはよくわからないが“こいつはヤバイ”と本能が判断したのだ。


「きっと相性が悪いんだよ。無条件で反発しちゃう存在みたいな…そういうやつ」
「なるほど相性か…そればっかりは仕方ないね。……それで、アオト君はどうするんだい?」


五条はサキに視線をやってアオトに問いかけた。
不思議そうにしていた表情は一気に引き締まり、眉間に皺が寄った。

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