PHASE.1 堕天峰 01
「うわ…」
「……ごあいさつですね、ナマエ」
堕天峰に到着した途端目に入った人物に、ナマエは思わず声を上げた。
あからさまな態度にも関わらず、ルーファンはにっこりと優しげに笑ってみせた。
それがさらに自分を不機嫌にさせるが、どうやらルーファンはわかった上でやっているらしい。ナマエの様子に対しクスリと笑いをこぼした。
ナマエが口を開くと急に刀を抜き、振り返りざまそれを勢いよく下ろした。
「!?」
ルーファンの刀からキン、と小さな金属音がしたかと思えば風を切って何かが傍を通り過ぎ、ほぼ同時に後方で岩壁が崩れた。
「……ルーファン」
「まだ来ますよ」
自分を掠っていった金属(銃弾のようだ)、それをぶった斬ったらしい本人に文句を言おうと近づいたが、笑顔で軽くいなされた。
内心毒づいたものの、言われた内容に改めて周囲を見渡す。
ルーファンに集中しすぎて余裕を失くしていたけれど、アオトたちは生気の欠けた人間と戦っている最中のようだった。
さらにルーファンの視線の先にも同じような人間が数人、銃を構えている。
――どうしていきなりこんなことになっているのか。
説明を求めようにも銃の照準がこちらに向けられていてはゆっくり問いかける暇もない。
「な、なにこれ…?」
体力が持たなかったのか、少し遅れて到着したフィンネルは当然状況が把握できていない。
(……このまま避けたらフィンネルに当たる)
とりあえず一刀投げて銃身を逸らし、照準を外したがすぐに構えは元に戻った。
(弾道を逸らそうか――いや、ダメだ)
生憎、逸らした先を自由気ままに出来るほどコントロール力はない。
自分はルーファンのように弾丸を真っ二つなんて芸当もできない。
瞬時に判断したナマエはフィンネルの腕を引いて、身体で匿いながら倒れこんだ。
――ああくそ…
毒づきながら、身体の状態を確認する。
どうやら避けきれず、わずかに掠ったらしい。
利き腕じゃなくてマシだったと考えるべきだろうか。
熱を持ち始めた箇所がこれから痛む過程を思って憂鬱になってきた。
「ナマエ、ナマエ!?何、なんなの!?」
(あー、結構痛いかも…)
事態が把握できず焦った様子を見せるフィンネルの声を聞きながら身体を起こす。
血の伝う感触が気持ち悪いなとぼんやり思った。
「ナマエ、大丈夫?」
フィンネルはナマエが立ち上がるのを手伝うため、寄り添ってくる。
常よりもよほど近い距離で、ああ女の子なんだなと今更なことを考えた。
星巡り-STARGAZER-
1088文字 / 2010.06.26up
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