カラクリピエロ

PHASE.1 トコシヱ 11


恐らくゲンガイの指示で動いていると思われるルーファンの持ち込む情報は――気に入らないが――信用できる。
――サキを差し出さないとトコシヱをクレンジングする。
匿っているという確証なんてないのに。こんなもの一方的な虐殺宣言にしか聞こえない。


ナマエ


アオトを振り返り声をかけようとした瞬間、遮るように五条が名を呼んだ。
ナマエに向かって首を振り、口を出すなと合図を送ってくる。


「僕たちは中立だよ、アオト君。サキをどうするかは君に任せよう。あまり時間はないが、少し話し合うといい」
「先生!」


五条は憤るナマエの腕を軽く引いて、隣の部屋へ移動する。
ナマエはクラスタニアのことになると途端に沸点が低くなるな、とこっそり苦笑した。
ナマエを椅子に座らせて自身も向かいに座るとゆっくりと口を開いた。


「いいかい、ナマエ。僕たちはアオト君たちの事情を知らないし、なぜサキが追われているのかもわからない。…もしかしたらクラスタニアが正しいのかもしれない」
「それはないよ」
「どうして?君はサキの事を知っているのかい?」


言うと、ナマエは眉間に皺を寄せてグッと黙った。五条もクラスタニアの手口はかなり強引だと思っているが口には出さず、宥めるようにナマエの肩を軽く叩いた。


「君がクラスタニアに抱く想いについて少しはわかっているつもりだよ。でもね、トコシヱに…この診療所にいるからには僕に従ってもらいたいんだ。君は顔も広いし、ヘタに動くと余計混乱を招く可能性がある」
「…………そうだね」


畳み掛けるような言葉にナマエは小さく頷いて、かろうじてといった様子で同意した。
俯いて前髪をくしゃりとつかむ。あわせて揺れたピアスが室内の光を反射していた。



◆◆◆



軽いノックの音。
どうぞ、と返して入ってきたのはタツミだった。
僅かに覗く心配の色はナマエに向けられたものだろう。五条はお茶でも淹れようか、と席を立ちさらに奥の部屋へ消えた。


ナマエ
「やあタツミ」
「……その作り笑いやめてくれる?」


笑顔で出迎えたナマエに対して溜息混じりに返しながら、タツミは新しく椅子を引っぱりだした。


「…ぼくは別に、」
「無理して笑うなって言ってるんだよ。別にいいでしょ、今はボクしかいないんだし」
「…うん、そうだね。……ところで話し合いは終わったの?」
「サキのことはアオトに任せてきた。…まぁボクも巻き込まれてここまで来たようなものだから」

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