カラクリピエロ

PHASE.1 トコシヱ 06


「そんなことないってば!もう離れて!」
「あいてっ…酷いなフィンネルは。もう少し優しくしてくれてもいいのに」
ナマエがあたしに優しくしてくれたらね!」
「…よく覚えておくよ」


にっこり笑顔を作ったナマエに半歩ほど下がったフィンネルは、診療所へ向かおうとする彼を呼び止めた。


ナマエ、あの…あのね、タツミって…」
「タツミ?……まさか一目惚れしちゃったとかそういう話…?」


タツミはやめといたほうがいいよ、と一方的にしゃべるナマエに首を振る。
恋愛相談じゃない、でも言いにくい話。
――話の流れから予想すると、光る宝石に関係している話。

ナマエはなかなか口を開かないフィンネルに微笑んでフッと息を吐いた。


「タツミとぼくは昔馴染み、かな。同志とも言えるかも。……けど、それ以上はごめん。ぼくが勝手に話すわけにはいかないんだ」
ナマエ……ううん、ありがと。引き留めてごめんね」
「こっちこそ、勝手に上がり込んでごめんね」


口調を真似て謝ると、フィンネルは今になって実感したのか、急にナマエを追い出しにかかった。


「ルーおばさんは歓迎してくれたのに」
「そういう問題じゃないよ!」


ぐいぐい背中を押されながら、二人でルーおばさんのところまで戻ってきた。
おばさんがニヤニヤ笑いでこちらを見ていることに気付いたナマエは、ようやく応援がてらに背中を叩かれた理由を悟った。

おばさんの目には、逃げたフィンネルをナマエが必死で追いかけているように映ったらしい。
間違ってはいないが――


「…別にそういう色っぽい関係じゃないんだけどなぁ…」
「なに?」
「んー…、いや、なんでもないよ」


ルーおばさんに手を振りながらフィンネルと店の出入口をくぐる。

またね、といつもの挨拶をかわして、ナマエは診療所へ。
フィンネルは店内へと戻っていった。

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