カラクリピエロ

PHASE.1 トコシヱ 04


ピークを過ぎたらしい『よっこら』店内。
ナマエと五条の二人も食事がひと段落し、デザートを運んできたフィンネルと仲良く談笑していた最中。急に五条の名が呼ばれ、3人は揃って声のしたほうを見た。

二人の少年と、一人の少女。
こちらを指差している少年が隣の小柄な少年に話しかけているのを確認したナマエは、思わず立ち上がって声をかけた。


「タツミ!!」
「久しぶり、ナマエ。元気して……うわ、ちょっと!!」


駆け寄って抱きつくと、呆れ返って半眼になっているタツミが全力でナマエを剥がそうと腕を突っぱねる。


「痛い痛い痛いって!いいじゃないか、ちょっとくらい感動の再会を演出してくれても」
「はいはい。それよりボクたち先生に用があるんだから、ナマエはちょっとどいてて」
「冷たいなー…そう思わない?」


あっけに取られて様子を見ていた少年に同意を求めるが、彼は理解が追いついていないようで「あ?ああ、だな」と生返事を寄越した。


「そうやって周りまで巻き込もうとしないでよ。アオトも真面目に返事しなくていい」
「そうは言ってもタツミの友達だろ?俺、お前が焦ってるの初めて見た」


居心地悪そうにするタツミはアオトの言葉を無視して、今度こそ五条を近くに呼んだ。
同時にフィンネルが一行と知り合いらしきこともわかったが、光を発した宝石を目にした途端、ナマエは全ての興味をそれに持っていかれた。

フィンネルと共に過ごした時間は比較的長いが、あんな光は見たことがない。
常に身につけているものだとしたら、何に反応した?
少なくとも自分ではない。五条も違う。この三人だと仮定して、可能性のありそうなのは…レーヴァテイル?


ナマエ、僕たちはこれから診療所へ場所を移すから、君も」
「ごめん先生、ぼくは後から…先行ってて!」


ナマエは五条の答えを待たず、裏へ引っ込んだフィンネルを追うためにルーおばさんのいる方へ向かった。





「おばさん!」
「ど、どうしたんだい、血相変えて」
「お願い、どうしてもフィンネルに会いたいんだ!」

だから裏に入らせて欲しい。
そういう意味での頼みごとだったのだが、ルーおばさんはなにやら嬉しそうに笑い、ナマエの背中を思い切り叩いた。

「痛ッ…て…!!お、おばさ…なに…?」
「いつの間にそんなことになってたんだい!いいよ、おばさんナマエちゃんなら大歓迎!」
「は……?」

意味がわからない。
とりあえず店員オンリーの場所へ立ち入る許可はもらえたらしい。
痛む背中に謎の声援を受けながら、ナマエはフィンネルの姿を探して視線を動かした。

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